腰痛と一括りにしてもいろいろな症状があります.腰の真ん中が痛い人やお尻のあたりが痛い人,痛みの部位が左右によっている人,お尻から足の方まで痛みが出る人など症状も年齢も様々です.今回はその中でも腰の真ん中に痛みが出る人で腰を反ると痛みが強く出現し「分離症やすべり症」と診断された方のお体はどんな状態なのか説明させていただきます,

 

 

分離症・すべり症って急に起こるの??

 

分離症・すべり症は急に出現するものではありません!!ここが大切です!たとえば,ご高齢の方で「急に今朝から痛みが強く出た」や「仕事をしていると慢性的に腰が痛かったけど最近特に痛みが強くなってきて・・・」などで病院を受診し,レントゲンで「腰椎の分離症があるね」や「ここ少し滑っているね」と言われそれが痛みの原因だと言われた方は注意が必要です.

 

なぜなら,そのすべり症や分離症は痛みが出た今朝に出現したわけでもなければ23日前に出現したものではない場合が多いからです.その分離症・すべり症はきっと若い時に出たものである可能性が高く,今現在出現している痛みの根本原因ではない場合がほとんどです.

 

 

 

 

 

分離症・すべり症ってどこの部分の話??

 

まず,腰の真ん中には背骨があります.脊柱と言いますが,腰椎が5つあり椎間板や靭帯,筋肉といった様々な組織があります.すべり症や分離症は腰椎の5番目に多発します.まず,腰椎の椎間関節という部位の説明をさせていただきます.椎間関節ってどこの関節?と思う方がほとんどだと思います.まずは,この関節がどこにあるのかというと腰椎は上から積みあがる形をしており,それぞれ1個上と1個下の腰椎と関節を作ります.これを椎間関節と言います.

 

 

椎間関節ってどのくらい動くの?

 

椎間関節とは頸椎~腰椎まですべてにあります.しかし,それぞれ構造が違うためそれぞれの関節が持つ役割が異なってきます.構造の違いというのはそれぞれの関節面の角度が違います.わかりやすい胸椎と腰椎の違いです.

 

胸椎の関節面は体を回す動作がしやすいように関節面が地面に対して水平から60°程度傾いていますが,腰椎は前屈や体を反る動作がしやすいように地面に対して垂直90°で関節面ができています.ぜひ写真の角度で手を用いて関節面を作ってみてください.どの方向に動きやすいか体感できると思います.

 

 

 

 

 

ちなみに,同じ腰椎の中でも第5腰椎~仙骨間が前後方向の可動域が大きく、約20°の可動範囲を持ちますが,上位の腰椎ほど可動範囲が狭くなります.このように,前方への屈曲可動域が大きいのが腰椎です.しかし,回旋の可動域は頚椎が45~50°,胸椎が35~40°の比較的広い可動範囲を持つのに対し,腰椎5つ合わせても僅か5~12°ほどです.その理由は先ほど説明したように椎骨1つ1つの椎間関節をなす関節面の角度が違うからです.

 

ここで注目していただきたい点は腰椎には体を回すための可動域は少ないということです.よく野球などでスイングをするときに「腰から回すんだ!!」と指導された方は多いと思います.しかし,これまでの説明を読んでいただいた方はおかしい点に気づいていただけると思います.

 

そうです!腰には回すだけの可動域はないのです!そのため腰椎ではなく,胸椎での回旋と骨盤・股関節の回旋が必要なのです.それなのに,腰での回旋を意識しすぎてしまうと椎間関節が炎症を起こし,痛みが出る場合があります.それがひどくなると分離症やすべり症を引き起こします.

 

また胸椎は,姿勢不良で勉強やスマートフォンをいじったりしていると負担がかかり動きが悪くなります.股関節ももともと可動域が広く,筋肉も大きいため負担がかかりやすく可動域低下や筋出力の低下が引き起こしやすくその為,腰椎の椎間関節にかかる負担が大きくなります.これが,分離症やすべり症の生じる原因です.

 

椎間関節の負担はどうやって減らすの??

 

ここまでで,分離症やすべり症がどんなものかは少しイメージできたでしょうか?次に椎間関節の負担を減らすために自分でできるエクササイズを説明していきます.

 

先ほど説明したように股関節の可動性や胸椎の可動性によって腰椎の椎間関節にかかる負担は大きく変化するのでまず,胸椎や股関節の可動性を確保している必要があります.

 

特に今回は胸椎の動きを改善するエクササイズを一つだけ説明させていただきます.

 

 

 

①背中で両方の手をつなぎます.

 

②左右の肩甲骨を近づけるように胸を張っていきます.

 

③胸を張るときに左右の肩が上がらないようにします.

④限界まで胸を反らしたら保持せずゆっくりと戻りしょう.

 

 

 

これを101セット程度で一日の中で何回か行ってみてください.

 

 

 

 

 

*注意点:このストレッチを行うことで痛みが強くなってしまい、その痛みがその後10分程度まで残ってしまう方はこの体操があっていない・やり方を間違えている可能性が高いので無理に行わないようにしてください!